第1章
予兆
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「OK、OK。そう来るなら、俺も手加減ナシで行くぜ」
言って寛也は、右手に立て掛けてあった熊手を手にする。取り敢えずの武器にと思って。
「おーりゃーあー」
叫んで勢いよく突進していき、熊手の先を相手の身体にたたきつけた。
しかし、びくともしない相手。
「え?」
すぐにその先を掴まれ、寛也ごと振り払われた。
「うわあっ」
寛也はサッカーボール籠の中へ、頭から突っ込んだ。
「結崎くんっ」
が、すぐに寛也は籠の中から頭を突き出した。
「ドンマイ、ドンマイ」
言って、籠の中のボールをひとつ掴み上げると、籠の縁に立ち上がる。
「くらえ、火炎シュートッ」
ボールを軽く放り投げたかと思うと、勢いをつけて蹴り出した。
ボールを蹴った弾みで寛也は籠の上から滑り落ち、蹴られたボールは敵目がけて飛んでいった。
が、寸でのところで避けられた。
「ちっ」
舌打ちして、寛也はすぐさま立ち上がろうとして、先に足首を掴まれた。
「わああっ」
ひょいっと摘まみ上げられ、逆さ吊りになる。
「ちょ、ちょと待てっ」
もう片方の足で蹴り飛ばそうとして、その足も掴まれた。
「ちょろちょろと煩(うるさ)い人間だ。裂いてやろう」
両足を左右に引かれた。
「さ、裂けるっ、さけるぅっ」
悲鳴を上げる寛也。