第1章
予兆
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「僕も翔くんと大差ないか」

 呟く声に寛也は少し首を傾げながらも、食い下がる。

「危なくなったら杳だけでも逃がすよ。お前、遠くで様子だけでも見ててくれたら…」
「調子いいなぁ、まったく…」

 それも有りなのかも知れない。

 どれくらいの距離を離れていれば敵が逃げ出さないものか。多分、杳が襲われたあの時間に自分のいた第三線校舎の特別教室と、体育用具室との直線距離なら、確実に大丈夫なのだろう。

 だったら、体育館にいて授業を受けていたのでは駄目だろう。

「仕方ないな」

 潤也はそう言って、ポケットの中をごそごそ探す。キーホルダーに付けている鈴くらいしか見つけられなかった。その鈴に、ぶつぶつと呪文をかける。

「何だ?」
「目くらましくらいにしかならないけどね。危険になったら、投げ付けてやるといいよ」

 言って、それを寛也に手渡した。

「言っておくけど、ヒロには僕の封印を解く力はないんだから、敵を倒すなんて考えずに、危険だと思ったら逃げること。封じられたまま炎竜がこわっぱに破れたなんて、洒落にもならない」
「そうか?」

 意味はよく分からないが、どうも情けないことらしかった。

「じゃ、いくよ」

 時間もないしと、潤也は心の準備を整えなければならない寛也に、早速術をかけた。

 不意をつかれた寛也は、あっさりと潤也の封印に取り込まれてしまった。


   * * *



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