第1章
予兆
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「本当に本気なの?」
潤也は返してきた。
朝一の授業が終わった休憩時間に潤也を捕まえて話した内容に、潤也は呆れ顔だった。
「本気だ。敵さん、どうせ俺達の気配を察知すれば出て来ねぇんだから」
「だったら杳の側を誰かがいつも離れずにいれば済むことじゃない?」
「そんなこと、不可能だろうが」
「校内だけなら、できないこともない。男同士なんだし、トイレにだって同伴できるし」
「……お前……杳に殴られたいのか?」
「は?」
「とにかくっ」
コホンと咳払いして、寛也は話を戻す。
「敵をおびき出さなきゃならねぇし、おびき出しても俺達の気配を感じてすぐに逃げられたんじゃ、意味がねぇ」
「だからって、力を封じてしまえば、丸腰も同然なんだ。普通の人間と変わらないんだよ?」
寛也が潤也に持ちかけたのは、潤也の力で寛也の力を封じて、出てきた敵を倒すと言うものだった。
が、寛也とて封じられてしまえば、ただの人間である。倒すどころか、身の危険がある。
「分かってるよ。だけど、あいつを何とかしてやりてぇんだ」
「ヒロ…」
潤也とて寛也の気持ちは十分分かる。
しかし、寛也も杳も、危険だと分かっている状況にさらすことなどできない。
寛也はともかく、杳は普通の人間だ。何かあってからでは遅いのだ。
あの、奈良での様子が思い起こされる。二度とあんな目に会わせたくなかった。できたら一生このまま保護していければいい。
そう思ってしまって、潤也は自嘲気味に笑った。