第1章
予兆
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唖然とする相手に、杳は背を向けて自分の確保していた席へ戻ろうとする。
と、その前に立ちはだかる者がいた。いつの間に来たのか、寛也だった。
「お前なぁ」
「あんたには関係ない」
その横を擦り抜ける杳の腕を、寛也がつかむ。
「そんな言い方、ねぇだろ? お前って、ホント、人の気持ち、分かんねぇ奴だな」
その寛也の腕を思いっきり叩く。
「うるさいな。ちょっと助けてくれたからって、恩着せがましく言うな。もう、放っといて」
「放っとけねぇて言ってんだろ? あいつらだって、心配してんだ。あんな翔の力になんか負けてんじゃねぇよ」
言ってしまって、寛也はしまったと思う。杳はすかさず不審そうに見てくる。
「何言ってんの?」
「いや、つまり…ここにいる奴はみんな同級生なんだし、怖がることねぇって…」
「何なの、それ。バカじゃない?」
プイッとそっぽを向いて行こうとする杳。寛也はその正面に、尚もしつこく立ちはだかる。
「逃げるなよ」
「どいてよ、ばかヒロ」
とっさに言った言葉に、杳は固まった。
が、すぐに顔を背ける。その杳の肩を寛也が掴んだ。
「お前が怖がってるのは、お前自身の弱さなんかじゃ…」
「…う…」