第1章
予兆
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「結崎さんに裸踊りでもやってもらいましょうか」
「な…!」
とんでもない事を言う翔の言葉を真に受ける寛也。
この二人のちぐはぐな会話に、潤也は苦笑するしかなかった。
「誰も見たくないよ、そんなもの。ヒロも本気にしないの」
翔もくすくす笑い出した。寛也はムスッと膨れる。
「真面目に考えろよ。杳が襲われたんだぞ」
お前達二人揃って大事にしているお姫様が――とは、言わなかったが。言えばとんでもないしっぺ返しが来そうだった。
「考えてますよ。結崎さんも少しは考えてください」
「ふん。俺の意見になんか耳を貸さねぇくせに」
舌打つ寛也に、二人は真剣な表情のまま、取り敢えず用具室から出た。
そろそろ他の生徒達も多く登校し始めてきたので、この場はいったん終了となった。
* * *
一見して仲良さそうに見える寛也と潤也と翔の三人を、杳は首を傾げながら体育館の入り口から眺めやっていた。
マジで怪しい。絶対、何かある。何かと聞かれれば困るが、勘がした。杳が思い出せないでいることと、繋がりがあるのだと直感していた。
「よお、もう授業、始まるぞ」
その時、ポンと肩を叩かれた。
わずかにビクリとして、反射的に身構えて振り向くと、見覚えのある男子生徒が立っていた。
一瞬、後ずさる杳に、相手は即座に謝る。
「悪い、脅かして」
その胸に2Kのバッチがあった。ようやく杳は、相手がクラスメイトだと気づいた。