第1章
予兆
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翌朝は早くから潤也にたたき起こされた。翔が登校前に顔を覗かせたので、寛也も手伝えと言われて。
翔と潤也はかつて手を結んでいたこともあり、寛也程にはこじれた関係のようには見えなかった。
ただ、翔だけはどこか空々しい態度を見せていた。
「杳の話だと、ここに連れ込まれたらしい」
寛也は体育用具室の前へ二人を案内する。運動部の朝練のため、鍵はかかっていなかったので、開けて中へ入る。
薄暗い倉庫の中は整然と片付けられていた。
「確かに、残り香がありますね」
翔は足元のコンクリートに片手をつきながら言った。
「でも、ひどく気配が小さい。自らの気配を悟られないよう、じっとしているのでしょう」
「さすが、天竜王殿。じゃ、ここは一発、奴のシッポでも捕まえて、とっととやっつけてみせてくれよ」
また、睨まれた。本当に冗談が通じない。
そんな寛也に、潤也が横でため息をつく。
「ガキなんだから」
「んだとー?」
「本当に」
翔は立ち上がる。
「敵は何を間違って結崎さんなんかに化けたんでしょうね。よりにもよって。僕ならまだしも」
「どーいう意味だ?」
声を荒げる寛也に、翔は肩を竦めただけで返した。
「学校を今度こそ全壊にするならできますが、そう言う訳にもいかないでしょうね。あぶり出しますか」
「あぶり出す? どうやって?」
疑問が浮かぶままに問うてくる寛也に、翔は面倒そうに答える。