第1章
予兆
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「話って何ですか?」
杳の気配が玄関から消えるのを待って、翔が口を開いた。
「杳が襲われた。理由は分からねぇ。相手は配下クラスの小物だったけどな」
「!?」
翔は寛也の言葉に顔色を変える。寛也の言わんとする意味を察したのだろう。
「父竜の…?」
「多分。野郎、俺の姿を見てあっと言う間に逃げやがって出て来ねぇ。だけど、まだ校内に潜んでるぜ」
「学校…ですか?」
「ま、引っ張り出しさせさえすりゃ、すぐにカタはつく。それよりも…」
寛也はジロリと翔を睨んで、勢いその胸倉をつかみ上げた。
「お前、杳に何をしやがったっ?」
そのまま翔の身体を門柱に押し当てた。
頭1個分低い翔は、寛也の力でされるままだった。が、その表情は平然としたまま、寛也を見上げる。
「何って?」
「あいつのおびえ方、普通じゃなかった。変な術をかけたんだろうがっ!」
翔は少しびっくりしたような顔をしてから、小さく笑う。
「何もしてませんよ。ただ、少しだけ、近づく悪い虫を怖がるようにしています。余計なことに首を突っ込まないようにするためにもね」
杳の為だと言う翔に、寛也は怒りが沸き上がる。
「それは、お前以外の誰も近づけさせねぇ為だろっ? お前、杳を何だと思ってるんだ!?」