第1章
予兆
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 何でこんな性格破綻者の為にと思いながらも、寛也は次の授業も杳の隣を占拠した。

 休憩時間にトイレに立つ杳に、逃げられると思ってついて行こうとしたら、とうとう頬を叩かれた。

 訳が分からなかった。

「一筋縄じゃいかないことくらい、分かってただろ?」

 休憩時間に潤也の席まで出向いた時、一番に言われた言葉がこれだった。

「仕方ねぇだろ。こっちだって、どこまで喋っていいのか分かんなくなっちまったんだ。ったく、あのチビは…」
「翔くんの所為じゃないだろ」
「だって考えてみろよ。俺達のことは奇麗さっぱり忘れてんのに、アイツのことは覚えてんだぜ。不公平だろ。それ、分かってて、記憶を消したんだぜ」

 潤也は寛也の顔を見て、にまにま笑う。

「な、何だよ?」
「べーつにぃ」

 含み笑いの潤也に、ムッとする。

「気持ち悪い奴だな。お前、やっぱり前の方が可愛くて良かったぜ」

 言った寛也のみぞおちに、容赦ない拳が一発繰り出された。

 うずくまる寛也に、潤也は冷たい声を浴びせる。

「で、何の用さ? 杳、帰ってきてるよ」

 潤也の指さす方向に寛也が目を向けると、そこについさっき出て行ったばかりの杳の姿があった。


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