第 5 話

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「なぁ、あの馬鹿の姿が見えねぇんだげと、戻ってきてねぇのか?」
 朝遅くに起き出して、遅い朝食をすませてからようやくに、セフィーロは普段との違和感を感じたらしかった。朝から元気なライムの姿が見あたらなかったのだった。
 問われたマルスは、彼も寝坊でもしたのか、パシャパシャとまだ顔を洗っていた手を止め、タオルで顔を拭きながら振り向く。
「夜更けには帰ってきたけどね」
「ベッドは使ってねぇみたいだし、エドガーの所にもいなかったし…どこ行っちまったんだ?」
「…さあ」
 マルスはゆっくりと空を振り仰いだ。
「そのうち、帰ってくるんじゃない?」
 空に何かあるのかと、セフィーロも同じように見上げた。しかし、それはいつもと変わらない色をしていただけだった。
「さて、僕にはまだすることがあるんだ。セフィーロはどうするの?」
 そう言ってマルスはセフィーロに向き直る。いきなりどうするのかと聞かれて、何を言わんとしているのか理解出来ないでいるセフィーロに、マルスは小さく笑った。
「いつまでも国を開けてもいられないんじゃないの、第一王子様」
 茶化すようにそう言って、マルスは行ってしまった。その後ろ姿に、昨夜のライムのそれが重なる。
「…何なんだ…」
 肩をすぼめてから、後を追いかけようとする。
 その時、風が呼びかけた。振り返ってもう一度仰いだ空に、ゆるやかに風が舞っていた。


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