第 5 話

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 悲鳴の聞こえた場所へ一番にたどり着いたのはセフィーロとライムの二人。そしてすぐにエドガーが追いついてきた。その彼らの目の前に現れたのは、これまでの小モンスターとは掛け離れた、体は人の倍はあろう程のモンスターだった。そのモンスターに、どこから迷い込んだのか、少女が一人追い詰められていた。
「こんなヤツがいたのかっ!」
 森に入ってからはモンスターが多かったとはいえ、どれも大した強さを持たない微弱な物ばかりだった。それと打って変わって、この目の前の奴はまるで怪物に見えた。その牙は人の腕など容易に食いちぎってしまいそうなほど鋭く、頑丈そうで、爪は太い幹さえ一撃で砕いてしまえそうな程だった。
 思わず後ずさるセフィーロの横から、素早くライムが飛び出して行こうとする。その腕をつかんで制止したのはエドガーだった。
「今のうちにここを通り抜ける」
「なっ!?」
 ライムが大きく目を見開いて、エドガーを見やる。
「簡単に倒せる相手ではない。あの娘には悪いが、あいつに気付かれんうちに行くぞ」
「エドガーさまっ!」
 ライムは掴まれていたエドガーの手を払いのける。
「目の前で人が襲われているんですよっ。俺には知らん顔なんてできませんっ」
 言うが早いか、あっと思った隙に、ライムはその巨大なモンスターの前に飛び出して行った。
 そして少女を庇うかのように、その前に立つ。
「あのばかっ」
 つぶやいたセフィーロの横で、エドガーは腰に携えた剣に手をかけるが、そのまま躊躇したのか動きが止まる。
 その間にモンスターは、突然の闖入者に怒りを膨らませていた。大きくひとつ吠えて、前足を振り上げた。相手を威嚇するその動作に、しかしライムは怯むことなど知らないように、剣を構える。その身の上に、モンスターは牙を剥いたまま鋭い爪を振り下ろす。ライムは細身の剣で受け止め、なぎ払う。
 ライムの後ろで動けないでいる少女は、そのまま逃げることも出来ないで小さくなったままだった。背後の少女を気にしながら、ライムはその場所に防御の態勢を取ったまま、攻撃に出られない様子だった。このままではいずれライムも追い詰められるに違いない。セフィーロは怯む思いを奮い立たせ、腰の剣に手をかける。
 その時、セフィーロの横でエドガーが動いた。
 それは、すばしこいセフィーロよりもさらに素早い動きで、そのモンスターの身に剣を突き立てた。が、その剣はカーンという甲高い音とともにエドガーの後方へと弾き返された。モンスターの身は、剣が突き刺さらない程の堅い甲羅で覆われている様子だった。
 弾かれた剣を追ってエドガーは地面を蹴る。そのエドガーへモンスターは素早く目を走らせる。
「エドガーさまっ」
 ライムが名を呼ぶ。
 再び剣を握り、エドガーはモンスターに向き直る。そのエドガーを横殴りにモンスターは腕を振り下ろす。飛びすさび、素早くよけるエドガー。モンスターの爪はエドガーの背後にあった巨木の幹を深くえぐり取る。
「何をしている、早く逃げろっ!」


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