第 4 話

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「ああやってね、毎晩宴会の日々。人々は貧困にあえぎ、今日の祭りを最後にこの町を追い出される町民も少なくないわ」
 自分の行為を正当づけようとするオリバーの言葉は、ライムにとってどれも空虚なものだった。
「よく狙ってちょうだい。チャンスは一回きりだからね」
 オリバーはそう言ってライムの背中をポンと叩いた。
 一気にライムの身体を緊張が走った。拒絶の思いが強くなる。
「大丈夫、あんたの腕なら。それにお友達のこともあるしね」
 悔しかった。しかしオリバー逆らえようもなかった。今、ここでさえ自分の周囲には彼の仲間が幾人も息をひそめている。的を外した時にはすぐにでも出でて領主を切り裂くと言う。剣を使えば被害も領主のみに止まらないことはライムにも知れた。
「さ、奴が椅子に頓挫している今がチャンスよ」
 オリバーに促されてライムは矢を番え、狙いを定める。この距離ならば正確に目的を射抜くことはできそうだった。
 所詮、通りすがりの町、通りすがりの人。その命の重さなどライムには関係ないことだった。それよりも仲間の方が大切だと、そう自分に言い聞かせて弓を引く。
 とその時、ライムの目の端に、部屋の片隅から飛び出してくる女の子の姿が映った。まだ年端もいかぬこの少女が、この領主の娘であることがすぐに知れた。領主の顔の緩むのが見て取れた。
「ライム」
 オリバーの急かせる声に、ライムは意を固めた。
 ヒュンッと風を切る矢の音がしたかと思うと、その矢先はまっすぐに領主のかぶる帽子をさらい、そのままむこうの壁につきささった。領主は無傷だった。それと同時に吹き抜けた突風が、部屋中の明かりをかき消した。
「なっ…!」
 騒然とする館内。護衛の者達が庭に姿を現し、ライム達の姿を捕らえるのに時間はかからなかった。
「ちっ、引き上げるよ」
 明かりが消えたのでは、当初と計画が変わってくる。オリバーは舌打ちし、ライムの腕をつかむと、身軽に塀を飛び降りた。手下達もそれに続いた。


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