第 4 話

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「大丈夫よ。ちょーっと長旅で疲れてたみたいだから、ゆっくり眠らせてあげようと思ってね」
「何か入れたんですね」
 キッとライムはオリバーを睨む。
「眠ってもらっただけよ」
 オリバーは笑みを作りながらライムを引き寄せる。そしてもう片方の腕も掴み上げる。
「あんたのこの腕を見込んでちょっと頼みたいことがあるんだ。聞いてくれるよね?」
「ふざけないでください」
 言うが早いか、ライムはオリバーの股間目がけて膝を繰り出した。オリバーは引きつった悲鳴とともに、床に転がりもんどり打つ。その間にライムはオリバーをひょいとまたいで出口へ走る。
 が、その行く手は遮られた。つい今し方までそれぞれのテーブルで酒を飲んでいた筈の男が二人、入り口に立ち塞がっていた。
「こぉのガキんちょ、よくもやってくれたわね」
 奇麗に塗りたくった化粧の下から脂汗を吹き出させてよろよろと立ち上がり、オリバーが低い声で言う。振り返るとマルスとセフィーロの二人を取り押さえる、彼の仲間が他にもいた。
「そう簡単に逃げられると思ったわけ?」
「何だよ、あんた達は」
 このテント自体、オリバーの息がかかっていたと気づいたのがこの時だなんて、自分でも間抜けだと思った。


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