第 4 話
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「エルフィロード。昔語りに登場する織物でね、原材料の白月絹に妖精の羽を織り混ぜた糸なの。これが例えようもなく美しいって言われててね。その糸を使って布を織り出し、それをふんだんに使った衣装を身にまとうの」
その言葉に、セフィーロは一瞬ライムの方を見やる。ポーカーフェイスを装うマルスと違って、少しだけ顔が引きつっていた。
「ああ、もう、考えただけでわくわくしてきちゃう。そんな衣装をまとう夢のようなあたしの姿が想像できる?」
想像したくもないと呟いたのはマルス。
「あたし、妖精の羽が手に入るのなら、いくらでも出しちゃう」
ふーっと、誰かがため息をついた。
「もう、帰ろうよ。リオンさま達、心配しているよ、きっと」
自分は明らかに関係ないと言った口調でマルスがライムを促す。自分よりもこの幼なじみの方がうっかり口を割るのではないかと、内心、冷や冷やしていたのだ。
「さ、セフィーロも」
言いかけた時、ふとマルスの身体が揺らいだ。立ち上がろうとした体は、ゆっくりとテーブルの上に半身を倒れ込ませた。
「マルス?」
横にいたライムが介抱しようとするのを、彼の腕を掴んで止めたのはオリバーだった。
「あーらら。ちょっとお酒がきつかったかしら。こっちの坊やもお休みになったみたいね」
「酒…?」
呟いてライムはもう一人の連れを見やる。そこにはグラスを片手に握り締めたまま、テーブルに突っ伏しているセフィーロの姿があった。