第 4 話

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「ライムはね、ああ見えても村一番の弓使いだったんだよ」
 マルスが自慢そうにセフィーロに耳打ちした。
 壇上でライムは、それでもやっぱり緊張するのか、大きく深呼吸をしてからゆっくりと矢をつがえた。
 ピンとのばした背筋が、自分の知らない人物のようにセフィーロには思えた。いつもの陽気な表情と打って変わって、真剣な横顔がひどくセフィーロの目を引き付ける。
 辺りの雑音が消えうせる。
 そして、矢が放たれた。白い羽をつけた矢は真っすぐに的の中心へと突き刺さる。
 観衆に感嘆の声が上がる。
「ね」
 マルスがセフィーロに小さく言って、自慢そうに鼻の下をこすった。
 実際、ライムが矢を射るのを見るのは初めてだった。弓を使うことは知っていたが、本当に的に当たるとは思っていなかったのである。そう言えば、初めて国でライム達に助けられた時の矢、あれは彼のものだったのだろうか。
 続けて放たれた矢も、目的の場所に突き刺さる。
 三本、四本、たて続けに放たれる矢は、言葉どおり寸分違わず的の中心に命中していった。まさに百発百中の腕前だった。
「ま、まぐれだよな、あんなの」
 さしものセフィーロも驚いた。が、眼前で見せられた事実をどう否定してよいものか、言葉が見つからなかった。
 そして全ての矢が的に命中した時、観衆から嵐の様な拍手が沸き起こった。どれもが素直な感嘆の声。その声に壇上のライムは少しだけ照れ臭そうに、しかしうれしそうに微笑んだ。


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