第 4 話

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「賑やかな町だなぁ」
 砂漠の果てにたどり着いた町は、まるで収穫祭の真っ最中でもあるかのように賑わっていた。広場には市が立ち、賑やかな子供の声が脇を通り過ぎて行く。
「久しぶりの町ですし、ここで宿を求めませんか?」
 リオンの遠慮がちな意見は、年少者達の即賛成の声に後押しされて、エドガーを渋々了承させる。本来、賑やかな町はあまり好いていない様子のエドガーは、この団体旅行にも不満そうだったが、かと言ってこの道連れから離れるでもなく、同行していた。
「じゃあ、早速見物に行こうぜ」
 取り敢えず宿を決めると、そう音頭を取ったのはセフィーロだった。それにすかさず賛同するライム。
「賛成。何かわくわくしてくるよな」
「ライムが行くのなら僕も行こうかな」
 セフィーロの意見には従わないが、この幼なじみの言うことには素直な顔を見せるのはマルス。この二重人格的な所がセフィーロには気に入らなかった。さっそくにもライムの腕にべとっと、纏わり付いている。それを目にして、セフィーロは舌打ちしそうになって、慌てて止まる。その目の端にエドガーの姿が映った。
 セフィーロ達をあまり良く思っていないこのエドガーが、自分達から離れない理由を、セフィーロは何となく感じていた。町で宿を取る度に夜の女遊びへと出掛ける彼が、本当に求めているのが誰なのか。
 あの、月夜に一度きり見た薄く透き通るような羽を持つ妖精――旅の途中にも時折垣間見ることの出来た、エドガーのライムに向ける表情。それは決して相手の目に映ることはなかったが、いつもその姿を追いかけていた。そして多分ライムも。


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