第 2 話

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「あーっ! ライム!」
 ようやく宿へ向かおうと腰を上げた時、聞き覚えのある声が背後からした。
「やっと見付けた! どこにいたんだよっ」
 元気に駆け寄って来て、ライムにとびついてきたのはマルスだった。
「マルス…?」
 ライムが驚いた顔をする。
「何でここに?」
「僕ね、ライムに危険を知らせようと思って来たんだよ。あのね、兄様がライムのこと捕まえようと兵を送り出したの」
 セフィーロの存在は目に入らない様子で、ぎゅっとライムにしがみつく。セフィーロは何かムッとする。
「ああ、それならさっき…」
 ライムが振り返る。
「セフィーロが追い返してくれたよ」
「ええっ?」
 その時になって初めてセフィーロに気付いたように、マルスが振り向く。
 別に自分が追い返したわけではないが、結果的にそうなってしまったので、あえてセフィーロは否定しなかった。そのセフィーロに、マルスはむくれた顔をする。
「僕が守ってあげようと思っていたのに」
「ありがとう、マルス」
 言ってライムはマルスの頭を撫でる。ライムにゴロゴロ懐くマルスはセフィーロには無性に鼻についた。
「でも兄様の事だからきっとまだ諦めてないと思うよ。だからね、僕も今日から、ライムを守るために一緒に旅をするね」
 とても有無を言わせないものがあった。


   * * *


 宿につくなり、よっぽど疲れていたのか、ライムは床に潜り込むが早いか、あっと言う間に眠ってしまった。
 さっきの涙はもう、跡形もなかった。
「可愛いよね、ライムって」
 マルスがくすくす笑いながら言う言葉に、セフィーロは否定も肯定もできなかった。
 彼は実はライムとは同じ村で育った幼なじみなのだと言う。長兄は国の王をしているが、縁を切ってしまったから関係ないのだと付け加えた。
「ってことは、おめぇももしかして…羽根なんて生えてたりするのか?」
 リオンの耳に聞こえないようにこっそり聞いてみる。
「ライムが正体を見せたの?ふーん」
 セフィーロの質問には答えず、マルスはそう言うと<含んだような笑みを向けた。
 あとは何を聞こうとも教えてくれなかった。村を飛び出して来た身とは言え、守らなければならないものはあるのだと、要らない事まで頑固に主張して。
 別に何もかも知りたい訳ではないと、セフィーロは口を尖らせながら答えた。その様がマルスの笑いを誘っていた。


   * * *



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