第 2 話
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場末の古びた酒場――そんな言葉が似合う場所だった。セフィーロはその薄汚れた、煙草の煙が漂う中に目的の人物を見いだす。
ライムだった。
一人でこんな所にいるということは、思った通りまたエドガーは女性を口説いて、どこかの宿に入り込んでいるに違いない。
どこかしらライムの背は頼り無げに見えた。その姿は、声をかけることをはばからせるものをセフィーロに与えた。が、ようやく見付けたものを、そのまま知らぬ顔をする余裕もなかった。
「よお」
セフィーロは何くわぬ素振りで、ライムの肩をたたいた。ゆっくりと顔がこちらをを向き、ずっと忘れられなかった青い瞳がセフィーロを捕らえた。
「何やってんだ、こんなところで」
平静を装った声だと自分でも気付いた。が、ライムはキョトンとした表情をして見せた。
「誰…だったっけ?」
セフィーロは思わずライムの胸倉をつかんでいた。
「おめぇ、言いたいことはそれだけか?」
「ゴメン、冗談だってば、セフィーロ」
ライムはそう言いながら、セフィーロの手を振りほどいた。
相変わらずな野郎だと思った。
「で、何で一国の王子のセフィーロが、こんな所にいるんだ?」
空いていた正面の席に腰を降ろすと、待っていた質問が投げかけられた。お前を追いかけてきたとは、セフィーロには口が裂けても言えるものではなかった。
「俺は…リオンの野郎が王になるために、旅はいい修行になるからってうるせぇもんだから、仕方なくな」
口から出まかせ。思いっきりバレるのではないかと思った。しかしライムはそんなセフィーロの内心には気付かない様子で、相槌だけ打っていた。
やっぱりどこか元気がないように思えた。じっと見ていると、振り返るライムの瞳とぶつかる。何だかすごくぎこちない気がした。
「何?」
ずっと、追いかけていた瞳。なのに、実際に会うと何も言えなかった。慌てて目を逸らすことしかできなかった。
カタリと、椅子を立つ音がして、振り返るとライムが立ち上がっていた。
「おい…」
「場所、変えようか」
その足元はおぼつかなくて、ふらつく身体がセフィーロの脇を通り抜けようとした時、丁度よくセフィーロの方へと倒れ込んできた。