第 1 話

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「王子、待ってください〜」
 へろへろになりながらも、それでもついてくるリオンを、セフィーロは面倒くさそうに振り返る。
「だからついて来るなって言ったじねぇかっ!」
「いけませんっ、私がついてでも行かなければ、王子の身に何が起こるかもわかりませんし」
「おめぇがついて来る方が、手まといなんだってばよ」
 セフィーロは頭を抱えてしまった。
 セフィーロは今、エドガーとライムの二人を追いかけているのだった。やられっぱなし的な気分が晴れなくて、どうしてももう一度殴ってやりたかったのだった。本当はそれも言い訳に過ぎないと、心の底では気付いていたが。
 下手に誘拐事件の後だったので、心配しないようにとリオンにだけはと先ず打ち明けたのが、災いをした。どうしてもついて来ると言って聞かなかったのだった。お供を許さないと言うのならば、首に縄をつけででも出発は阻止すると言って。仕方なくセフィーロはリオンの動向を許した。父母の信望も厚いリオンが一緒だからこそ、若い間に色々な経験を積むことも大切なことだと、城の者も喜んで見送ってくれることとなった。それは幸運だったのであるが。
「そんなことを言わないで、少し休みましょうよ」
 リオンはとうとうへたり込む。セフィーロは溜め息が出た。
 出発が既に幾日も遅れているので、追い付くには相当ピッチを上げていかなければならないのに、これでは何年かかるか分かったものではない。
「ああ、王子、見てください。北の空があんなに赤く染まって。きれいですねぇ」
 街道に座り込んでリオンが呑気な声を上げた。
 明らかに、前途は多難に思えた。





第2話
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