第 1 話

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 このまま城まで帰ろうと言う提案は、ライムに大却下された。そして、待ち合わせに決めた場所だからと、城から少し離れた丘の上に降り立った。
 地上に降りると、ライムはさっさと羽根をたたんでしまった。残念そうに思っている自分に気付いて、セフィーロは頬が熱くなる。ライムに気づかれないようにあわててそっぽを向く。
 ライムは先程からずっと、塔の方へ目を向けたままだった。そこにまだいるであろう自分の仲間を思ってのことと、セフィーロはすぐに思い至る。
「助けに行かなくていいのかよ」
 ライムに声をかけると、振り向いて笑んで見せる。
「オレがいたら足手まといだから。それにエドガーさまはすごく強いんだ。誰にも絶対に負けたりしない」
 言ってまた塔の方へ目を向ける。その真剣な眼差しに、セフィーロはひとり取り残されたような気がした。
 何を自分は期待していたのだろうか。セフィーロはライムの横顔から目を逸らし、足元の石を蹴飛ばした。
 どれくらいの時間、そうして待っていただろうか。やがて月が西の地平に沈み、空が白々と明け始めた頃、ようやくライムが口を開いた。
「時間がかかりすぎ」
「はっ?」
 つぶやくような声にセフィーロが聞き返すが、ライムは答えないままずんずんと丘を降りて行った。セフィーロはあわててその後を追う。
「どーしたんだよ。待ってるんじゃなかったのかよ」
「あのくらいの人数なんて、エドガーさまならあっと言う間なんだよ。それなのに未だに帰ってこないところを見ると…」
 まさかとセフィーロは口走りかけてやめた。どうもライムの様子がさっきとは変わっているのだった。心配している様子はすっかり消え、代わりにその表情に浮かぶのはどう見ても、怒りのそれ。
 セフィーロはそれ以上何も聞くことができず、ただライムの後について行った。

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