第6章
巫女−参−
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潤也さん達は一番風呂を僕達に譲ってくれた。
ジャンケンで碧海が先に入った後、僕はのんびりと湯船につかった。そう大きくはない風呂だったけど、長旅の疲れを癒すには十分過ぎる程だった。
僕が風呂から上がると、先程までみんなでカレーを食べていた居間の和室に、布団が二組敷かれていた。そのうちのひとつに碧海が胡座をかいて座り、テレビを見ていた。
何だかな。さっきまで借りてきた猫だったのに、すっかりリラックスした様子だった。
居間を僕達に明け渡してくれた結崎兄弟は、キッチンのテーブルに腰掛けて話をしていた。その二人に声をかける。
「お先にすみません」
「おお」
背を向けて座っていた寛也さんが、片手だけ挙げて答えてくれて、こっちを向いて座っていた潤也さんは、にっこり笑顔を向けてくれた。
「疲れただろうから、早く寝るといいよ。僕達には気兼ねしないでね」
「ありがとうございます」
思わずペコリと頭を下げる。
いい人だ、この人達。杳さんのお陰だと言うのもあるだろうけど、それ以前の、この人達の温かさなのだと思った。
この家の中が、何となくホッするんだ。
祖父を亡くしてから、故郷を離れてずっと旅をしてきた僕は、家庭と言うもののぬくもりを、すごく求めていたのかも知れない。
「ほら、そんな所に突っ立ってたら風邪をひくよ。早く布団に入って」
ぼんやりしてしまった僕に、潤也さんは笑みを崩さないまま言ってくれた。
「はい」
そんな二人に僕はもう一度頭を下げて、碧海のいる居間に入っていった。
* * *