第6章
巫女−参−
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「カレーだけど、いいよね?」
潤也さんはそう言って、僕達に夕飯を御馳走してくれた。杳さんから連絡があってすぐに作り始めたんだろう。ここは二人暮らしだと言うのに、大量のルーが鍋の中にあった。
もしかして、さっきの拒否の態度は芝居だったのかも。潤也さんは初めから僕達の頼みを受け入れてくれるつもりだったんじゃないだろうか。
本当にいい人だなぁ。
何だか妙な顔合わせだけど、僕達は座卓を囲んでカレーライスを食べた。
杳さんだけは昼食が遅かったからいらないと言って外れてた。碧海の話だと3時頃に紅茶を飲んでいただけらしいけど。
カレーはすごく美味しくて、あまり食べない僕までもおかわりしてしまった。碧海なんて遠慮がなくて、3杯目だし。
潤也さんって、優しくて頼りになる上に料理まで上手いなんて、思いっきり尊敬してしまった。なのに、杳さんはそっけない態度ばかりで。気の毒になってしまう。
「ごちそうさまでしたー」
鍋の中がすっからかんになって、潤也さんは少し苦笑を浮かべていた。なくなると思っていなかったみたいだった。
「さて、そろそろ帰るか。うるさいのが戻ってくる前に」
満腹になって、しばらくだれてから、そう言って一番に腰を上げたのは聖輝さんだった。
御馳走になるだけなんて申し訳ないと言って、後片付けをユリさんと一緒に買って出た美奈ちゃんに、そう言って声をかける。
「えー、もう?」
明日は日曜日なんだし、もう少しゆっくりしていってもいいと言う美奈ちゃん。まだ8時になったばかりだと言って。うーん、微妙な時間だと僕も思った。その横で。
「じゃ、オレもそろそろ」
そう言って杳さんも腰を上げようとしたその時。
玄関のドアが開く音がした。
「何だ、こりゃあ」
玄関先で驚いた声が上がる。
きっと、玄関の土間にひしめき合っている大量の靴に驚いたのだろう。8人分だし。
その声に、聖輝さんはため息をついていた。
そして、杳さんと言えば、慌てた様子で立ち上がると潤也さんに声をかける。
「オレ、来てるの言わないで。ちょっと部屋、借りる」
言うが早いか、潤也さんの答えも聞かないで部屋から飛び出して行こうとして、出口でその人と出くわした。
「あ…」