第6章
巫女−参−
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「いくら何でも、僕達が四六時中、君達のボディガードができる訳ないだろ?」

 当たり前のように言う潤也さんの言葉は、至極もっともだけど。

「だったら、学校どうするの?」
「もちろん、通えないね。家にも帰れない」

 美奈ちゃんが聞くのに、潤也さんは平然と返す。

「えーっ、ちょっと、それは困るー」

 僕は独り身で学校も行ってないので平気なんだけど、みんなはそうもいかないだろう。家に帰れないのはちょっとまずいかな。

「この勾玉だけ預かってくれないの? あたし、家には帰りたい」
「無理だよ。勾玉は僕らには扱えない。分かるだろ?」

 竜を封じ込める力を持つ勾玉を、竜神達が恐れるのは当たり前で、それを前提に僕はさっき脅してみたんだけど。

 それでも、碧海もユリさんも家出状態はまずいよなと顔を見合わせる。みんな、困るよね。

 うん、だったら他に方法はないかな。

「父竜が一番にねらうのは勾玉なんだから、僕が勾玉すべて預かって、結界内に残るよ」

 ま、自由の身だし、心配してくれる人もいないし――と思いかけて、ちらりと従兄弟の顔が浮かんだけど、手紙でも出しておけば大丈夫だろうと思い直す。

「いいの? 杉浦くん」

 聞いてくる美奈ちゃんに、にっこり笑ってみせる。いいに決まってる。

「じゃ決まりだ。こちらも保護する人数は少数の方が良いし、食費も安くすむからね」
「あ、すみません」

 リュックを無くした僕は、一文無しの身だった。全面的に迷惑をかけることになるんだ。うわっ、僕は何て強引なことを言ってしまったんだろう。

 今更になって、何度も頭を下げる僕を、潤也さんは笑って「いいよ」と言ってくれた。


   * * *



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