第6章
巫女−参−
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「どうする?」
「そんな義務、僕達にはないでしょう?」
「だよね」

 あっさりと否定する潤也さんと翔くん。僕は思ってもみなかった答えに、一瞬、言葉を失った。

 僕は無意識のうちにこの勾玉が竜達のものだと思い込んでいたのかも知れない。

 でも、だからと言って僕は引き下がる訳にはいかなかった。

「だったら…僕達の言うことを聞いてくれないと言うのなら、この場であなた達を封じます。父竜と一緒になって暴れられても困りますから」
「おい、浅葱っ」

 僕の過激な発言に、碧海が慌てた。

「お前、話し合いに来て、脅してどうするんだ」
「うるさいな。僕は真剣なんだ。碧海は邪魔だから黙ってて」

 僕の言葉に、碧海は言いかけた言葉を飲み込む。

 僕は座卓の上に置いていた赤い勾玉を掴む。

 僕の手の中で、ぼんやりと光る勾玉は、僕の気持ちが伝わったかのように、明るさを増していた。

 本当に何て不思議な珠玉なんだろうか。

 そんな僕を見やって、潤也さんは困ったように言う。

「僕達に選択権はないのかい?」
「はい」

 僕の返事に、潤也さんが呆れたように見やった相手は、部屋の一番奥で黙って成り行きを見守っていた杳さんだった。

「また変なことに首を突っ込んでくれたみたいだね」
「人聞きの悪い。首を突っ込んだんじゃなくて、巻き込まれただけだって」

 言って、プイッとそっぽを向く杳さんに向ける潤也さんの目は優しくて、ここで口止めされていることを言ってしまったら、この人達はいっぺんに味方になってくれるんじゃないかって、思ってしまった。だけど、杳さんがあみやだってことは絶対に口止めされていたから。杳さん自身がそれを望んでいないから。

「お願いします。勾玉を守ってください。あなた達の中にも、半分は人の血が流れていると言うのなら」

 父竜と人との間に生まれた竜神達。その伝説が正しいのなら。同じ人間でもあると言うのなら。

「一応、今は全部、人の血なんだけど」

 そう自嘲気味に笑ってから、潤也さんは続ける。

「父竜から守る自信はないけど、手下どもなら何とかなるかな」

 潤也さんの言葉に、翔くんは不満そうな顔を向けていたけど、何も言わなかった。聖輝さんに至っては始終無口だった。だけど、妹の美奈ちゃんの身も危険となれば、この人は初めから拒否する気はなかったんだと思う。

「それじゃあ早速だけど、結界を張るから、今日から君達はその中で生活してくれるかな?」
「は?」

 僕を初めとして杳さんを除く全員が驚いて、そう言った潤也さんを見た。


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