第6章
巫女−参−
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最後に現れたその子――翔くんは、僕たちをぐるりと見回す。
何だか人を寄せ付けないような目をして見やっていた視線が、僕の隣でふと止まる。
「清水…くん…?」
ああ、そうだと気づいた。彼が、僕がここへ来た元々の目的だったんだ。黄色の勾玉を持つ家の子。その勾玉は壊れてしまったと杳さんの話だったけど。
「あの…えっと、まず自己紹介から。僕は杉浦浅葱と言います。熊本から来ました」
僕は翔くんが座るのを待って、一番に切り出した。
「こっちが清水碧海くん」
翔くんとは知り合いだったけど、聖輝さんとも知り合いっぽい感じの碧海は、何故だか借りてきた猫状態だった。もしかして、内弁慶?
「で、そっち側の子が…」
「静川美奈。高2です。いつも愚兄がお世話になっています」
言ってペコリと頭を下げる。何か言いたそうだったけど、口をつぐむ聖輝さん。その横で潤也さんがクスリと笑いをこぼす。それを軽く睨む美奈ちゃん。
「あー、えっとー、それで最後が…」
「砂田百合子よ。よろしく」
軽く、長い髪をかきあげて名乗るユリさんは、その奇麗な顔で僕たち以外のを全員を睨みつけた。もうっ。
「で、僕たちに何の話かな?」
潤也さんはユリさんの態度を気にした様子もなく、穏やかに聞いてきた。
この人が竜王なのかな。だとしたら、話が早いかも知れない。
僕はそう思って、ポケットの中に持っていたものを取り出した。
赤い色をした勾玉。ぼんやりと明滅しているように見えるのは、他の勾玉が近くにあるから。
「私もっ」
美奈ちゃんが白玉を出すのを見て、碧海とユリさんも自分の持つものを取り出して座卓の上へ置いた。
4つの勾玉がほんのりと、同じリズムを持って明滅する。それは蛍光灯の光の中で消え入りそうな程度のものであったけど。
「勾玉…?」
呟く潤也さんを初めとして、翔くんも聖輝さんも、ちらりと一瞥をくわえただけで目を逸らした。ちょっと拍子抜けした気分だった。
「これは竜の勾玉なんです。これを持っている僕達は、何度か化け物に襲われました。何とかくぐり抜けたものの、次は本当に敵の手に奪われてしまうかも知れません。それだけはくい止めないといけないんです」
僕の話に潤也さんは、ストレートに聞いてくる。
「その勾玉を僕達に守れって言うのかい?」
勾玉には目もくれず、僕をまっすぐに見返してくる。穏やかそうな表情とは裏腹に、その目はとても厳しそうに見えた。
だけど僕は引き下がる訳にはいなかなかった。この人が――この人達が竜一族だと言うのなら、彼らに頼るしかこの勾玉を守る術がないんだから。
「そうです。父竜を封じたこの勾玉を守る義務は、竜神達にもあると思います」
「義務ね…」
僕の言葉に、潤也さんは呆れたように呟き、不機嫌そうに僕達を睨んだままの翔くんに目をやった。