第6章
巫女−参−
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 その後、知った顔とか知らない顔とかが集まった。碧海達は車で来ていたと言う知らない人が駅まで迎えにいった。

 後で教えてもらったことには、その人が美奈ちゃんのお兄さんだった。

「あーあ…」

 大きくため息をつくのは、美奈ちゃん。もちろん、お兄さんの顔を見て。

「これって、サイアクの出会いだわ」
「悪かったな、俺で」

 杳さんの隣に席を取った美奈ちゃんとは一番遠い対角線上の座布団に座を取って、お兄さん――聖輝さんも不機嫌そうだった。

 僕には兄弟がいないから良く分からないんだけど、兄と妹ってこんなものなのかな。

 ふと、もうひとつ余っている座布団に気が付いた。もう一人来るのだろうか。思った途端、外の階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。すぐに玄関のドアが開けられる音がした。

「お邪魔しますっ」

 そう、宣言するかのような口調の声が玄関でしたかと思ったら、猛ダッシュで和室へ駆け込んできた少年。

 髪の毛を振り乱して、思いっきり走って来たと言う痕跡で、汗だくだった。

 そう言えば、杳さんがついさっき電話をかけていたのって…。

「杳兄さんっ、何だってこんな所にいるのっ!?」

 入って来る様に叫んでいた。だけど部屋の一番奥に陣取って入る杳さんの席には、この人数じゃ簡単に近づけないようだった。その子は入り口で立ち往生していた。

 何だか分からないけど、確信犯だと、思った。

「うるさいな。大声出さなくても聞こえてるよ」
「だったら早く帰って寝ててよ。また倒れたって知らないよっ」

 えっと思って僕は杳さんの顔を見る。具合、悪かったんだろうか。そう言えば、顔色、あんまり良くないよな、この人。

 そう思っている僕に気づいて杳さん。

「平気、平気。あいつ、大袈裟だから」
「杳兄さんっ!」

 びっくりするような声で言うその子の見幕に、杳さんは面倒くさそうに返す。

「翔くん、うるさすぎ」
「何言ってんの。昨日から寝込んでたくせにっ」
「もう治ったよ。ったく…」

 プイッとそっぽを向くその横顔は、ものすごく不機嫌そうで。

 そんな二人を潤也さんがまあまあとなだめて、突っ立ったままのその子に声をかける。

「翔くん、座って。この子達、僕らに話があるみたいだから」
「…そのようですね」


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