第5章
巫女−弐−
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と、困惑する私たちに声をかける人。
「…悪いけど、先に行っててくれる?」
杉浦くんだった。
清水くんが諭すように声をかける。
「ありゃあ、何言っても聞かないと思うぞ」
私もそう思った。何て勝手なって思ったけど。
「違うよ。あの人、囮になるつもりなんだ」
杉浦くんの言葉に、みんな、えっと声をあげる。清水くんが、ありえそうだと呟いていた。
「何考えてんだかよく分からないけど、放ってはおけないだろ」
だから自分が追いかけるから、私たちには先に行けと言う杉浦くん。
「勾玉は、守ってよ」
そう言って、自分の持っていたものを清水くんに押し付ける。
「えっ、ちょっと待てよ。オレ達だけで逃げろって言うのか?」
不満の声を挙げる清水くん。彼だけじゃない、私だって不満だわ。
「そうは言ってないよ。勾玉を敵に渡すなって言ってるんだ。捕まったら今度こそ最後だから。頼まれてくれるだろ?」
大人なら、ここで素直にうんって言うんだろうけど、生憎私達は大人なんかじゃない。
目の前の正義と将来の平和を天秤に掛けられるほど人間、出来てないものね。
私たちは揃って猛反対した。
「だったらお前が勾玉持って逃げればいいんじゃないか」
そう言われて困った顔を向ける杉浦くんに、清水くんが勾玉を押し付ける。
杉浦くん、こうまで言われると、折れるしなかなかったみたい。
実際、私たちに何ができるって訳でもないのだけど。それは分かってるんだけど。気持ちってあるじゃない。
私達は一致団結して、杳さんが消えた方向へ向かって逆戻りを始めた。
* * *