第5章
巫女−弐−
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「だったら、父竜が復活してもいいって言うの? あなた、その時にどう責任取るの? 取れるの?」

 それって、責任問題で済むことなの?

 人質の身でなかったら、言ってやるところだけど。

 ちょっと悔しい思いをしていると、清水くんが中に入ってくれた。

「仲間割れしている場合じゃないだろ。今は何が最善なのか考えなくっちゃ」
「最善策って、何よ」

 砂田さんは、しゃしゃり出てきた清水くんを睨む。美人に睨まれると結構怖いものなのよね。

 清水くんも少しだけ怯む。

「だから、美奈ちゃんを助けながらも勾玉を守れる方法を考えるんだよ」

 ちょっと嬉しかったけど、この人、ばっかじゃないの。そんな方法が、私たちの手の中にあると思ってるの。

 思った通り、化け物が吹き出していた。

「じゃあ、どうすればいいのよっ。そんなうまい方法があるんだったら教えなさいよ」
「だからそれを考えるんだってば」
「そんな悠長なこと言ってる場合? 現状を見なさい」

 砂田さんって、ちょっと怖い。

「そろそろ、結論は出たかな。こっちも暇じゃないんでね」

 ぐいっと、私の腕を引っ張って、化け物が言った。痛いじゃないの、このっ。

 懲りずに化け物を蹴り上げようとしたその時――。

 小さな、呪文にも似た呟きが背後で聞こえた。

「なに…?」

 途端、化け物の動きが止まる。って言うか、硬直してしまった。

 振り向いたそこに杳さん。

 砂田さんのキャラクターにすっかり存在を忘れさせられていたけど、いつの間にか背後に回りこんでいたのだった。

 杳さんは、何も言わずに化け物の手をすり抜けた私の手を取った。

 逃げるチャンスは今しかない。

 誰もが、そう思った。


   * * *



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