第5章
巫女−弐−
-2-
1/13
パシンッと、頬に軽く平手を感じて目を開けた。
「あ、気がついた?」
真っ先に飛び込んできたのは砂田さんの顔。何だ、夢じゃなかったのかと思って、跳び起きた。
で、辺りを見回す。
「ここは…?」
そこは見慣れない場所だった。
と言うよりは霧のようなものが立ち込めて、周囲がよく見えないのだけど、声が何だか反響しているみたいだから、きっと小さな部屋のような場所なのだと思った。
「分からない。気がついたらこんな所にいて」
「他の人は?」
一緒にいた二人――杳さんと清水くんを思った。と、背後から声が聞こえた。
「無事だよ」
清水くんだった。その後から杳さんも姿を現す。
霧みたいなものの所為で、少し離れると姿が隠れてしまうらしかった。
清水くんは気がついたばかりの私に怪我はないかと聞いてくる。案外、優しいのね。
「どうやら私達全員、あいつに捕まったみたいなの」
砂田さんが肩をすぼめて言った。
抵抗する間もなかった。気がつけばこの場所に飛ばされていたと言う訳だった。私と杳さんは、砂田さん達に少し遅れて。
「勾玉は…?」
私は辺りを探す。だけどそれは間違いなく奪われている筈のものだったから、ポケットにもなかった。
「あとは封印を解く方法だけってことか」
杳さんがつぶやいた。
「壊せばいいだけなんじゃ…」
「連中にはそれができないんだ。あれは人ではないモノを封じる護符だから。相当な力のある奴じゃないと、破壊もできないと思う」
「よく、知っているのね」
砂田さんが杳さんに近づきながら声をかける。
「まるで竜の宮の神官か、巫女のように」
「勘ぐっても無駄。オレはそんなものじゃない」
「嘘よっ」
砂田さんは諦めない。
「私には分かるわ。あなたには古い時代の匂いがする。私達にとても近しい者の匂いが」
「ふーん」
杳さんはそう答えて、背を向けた。
「それで、オレがあんた達の言う通りだったとしたら、何か良いことでもあるわけ?」
「えっ?」