第5章
巫女−弐−
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ドヤドヤドヤとパーラーから飛び出して来た私達を、清水くんを待っていたらしい杳さんが見咎める。
「割り勘にしたいって言うなら一人855円だよ」
「違いますっ!」
清水くんが怒鳴る。途端、さっきの化け物が追いかけてきた。
「また会ったね」
そう言うそいつに、杳さんは嫌そうな顔を向ける。
「まさかこんなに早く見付け出せるなんて思っていなかったよ。どうやら僕は君を見くびっていたようだね」
「約束は一週間後だった筈だ。何しに来た? とっとと失せろ」
「おやおや、きれいな顔に似合わないよ。もう少し言葉を選んで欲しいものだ」
そう言ってそいつは今度は私達に目を向ける。
「みごとに揃っているじゃないか。封印はこれで解かれたも同然。さあ、渡してもらおうか」
ゆっくりと近づいて来たのは私の方向。思わず後ずさる私を庇うように、目の前に身を乗り出してきたのは清水くん。
「その前に杉浦を返せよ」
「杉浦…? ああ、あの坊やね」
言ってそいつは口元だけで笑った。
その瞬間。
耳をつんざくような奇妙な甲高い音が響いた。耳が痛くて、息が苦しくなって、目の前がぼやけてきた。
誰かが私を呼ぶ声が聞こえたけど、そのまま眠ってしまう気がした。
途端、手を引かれた。
「え?」
ハッとして見ると、杳さんが私の手を掴んでいた。
「逃げるよ」
そのまま、杳さんに手を引かれるまま、私はふらつく足取りで駆け出した。
後方で、砂田さんと清水くんが倒れ込むのが見えた。
* * *