第5章
巫女−弐−
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とぼけた様子で返す彼に、私は小さく溜め息。だけど砂田さんは気付いたみたい。
「青玉の『すい』」
ギョッとしたのは私ではなくて、その清水くんの方。スプーンを口にほお張ったまま目を剥いていた。
「男の子に転生したんだ。あの『すい』がねぇ」
言われて清水くん、さすがにムッとした様子だった。
「知らないよ、そんなこと。オレは巫女だなんて言われても何のことだか」
ああ、私と同じなんだと思った。そんなこと言われても困るわよね、実際。
「で、勾玉、くれるだろ?」
とは、杳さん。
ちょっと待って。じゃあ、この杳さんって…。
思った途端、砂田さんが切り出していた。
「だったら、もしかしてあなたが『あみや』?」
「はぁ?」
杳さんは奇麗な眉を寄せて、思いっきり不機嫌な顔になる。
「オレは巻き込まれただけだよ。無関係なの。勝手に仲間にしないで欲しいんだけど」
「でも…」
この人には何かを感じるのよね。これは砂田さんも私と同意見だと思う。
その「何か」が何なのかは、自分でも分からないんだけど。
「竜のこととか、勾玉のこととか、少し詳しいから協力してあげようって言ってるのに、あんまり勘ぐるんだったら、オレは手を引くよ。ただし、あんた達の仲間がどうなっても知らないし、父竜が復活しても責任は取れないけどね」
そう言うと杳さんは、伝票持って立ち上がろうとする。
慌てて止めたのは清水くん。ここで見捨てないでと懇願している辺り、ちょっと情けないかも。
「分かったわ。もう少し詳しい話を聞かせてちょうだい」
砂田さんがそう言って折れた。
* * *