第4章
巫女−壱−
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外へ出て、本当にそこにあの化け物がいるのを見た。
化け物とは言っても、一見して普通の人間にしか見えないんだけど。
その化け物は、何故か門の外で立ち往生しているらしかった。
「どうやら清水くんの言うとおりみたい。この門から中には異形のモノは入れないように結界が張られているんだ。そこで動けないでいるっていうのは、あんた、人間じゃないだろ?」
杳さんは敵を煽るような口調でそう言った。
オレはハラハラものだった。
案の定、敵さんは怒りを見せた。
「この結界はお前のものか?」
「まさか」
杳さんの答えに、化け物は杳さんの後ろに控えていたオレに目を向ける。
オレはプルプルと首を横に振る。オレじゃない、オレじゃないって。当たり前だろ。
「それよりも、あんた、杉浦浅葱って名前の子を知らない? ちょっと捜してるんだけど」
「…ああ」
化け物は笑った。人間の容姿をしているだけに、冷たく笑うとゾッとした。
「勾玉ふたつ諸共いただいた」
「あ、やっぱり」
こんな時にのんきな声を出さないでもらいたかった。杳さんってば冗談言ってる場合じゃないってのに。
「言っておくけど、巫女を殺すと2000年呪うヤツがいるから気をつけた方がいいよ」
何のことだか。
「それで、その子をさらって今度は三つ目の勾玉を狙ってるってわけ?」
「持っているんだろう?」
「さてね」
杳さんは相手の様子を観察しているようだった。
オレが見た限りでは、空間から姿を現したあの妙な術くらいしか知らないんだけど、まさかそれだけじゃないんだろう。
杳さんの目にはどう写ったのか、オレはちらりと杳さんの横顔を伺い見る。
だけど驚いたことに、あの豊かな表情は見られなかった。
「どうせ現代に生まれたお前達には、勾玉を使う力などないだろう。記憶すらない者もいるようだしな」
こいつ、オレの方を見て言いやがった。ムッとするオレの横で杳さんが言い返してくれた。
「あんただって転生者だろ、条件は同じだよ」
「そうかな」
化け物が笑う。
ヤツは右の手を胸の高さまであげて見せる。上に向かって広げた手のひらに、どこから出現したものか、水晶球が光を放った。
ゆっくりと霧が晴れていくように、その中に次第に姿を見せていくものにオレは息を飲んだ。