第4章
巫女−壱−
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「これは…」
オレの驚きに、すかさず気付いたようだった。
「君も同じものを持っているんだろ? 君が巫女でないのだとしたら持っていても危険なだけだから、返してくれない?」
何だよ、こいつ。すっごい上から物を言う奴だ。
「何でお前にやらなきゃならないんだよ。大体何なんだ、お前」
「ああ、自己紹介してなかったね。僕は杉浦浅葱(すぎうらあさぎ)。綺羅の最後の巫女の一人『ひな』の転生者。…と言っても君には分からないだろうけどね」
言ってそいつ――杉浦浅葱は小さく笑った。
オレのことをばかにしているように。思えてしまった。
昔からこういう妙に悟ったような顔をした人間は好きじゃなかった。何か無性にムカついて、オレはそいつに背を向けた。
「ちょっと、勾玉を…」
知らん顔をするオレの前に、杉浦は回り込む。
「あの祠から勾玉を持ち出したのは君だろ。封印が解かれた跡もあったし、あそこで何をしたのさ?」
「ほこら…?」
オレはそいつの言葉に眉をひそめる。
去年の夏に行った水無瀬村のことを思い出す。
転校して来たばかりのオレのガールフレンドだった大神夏菜と一緒に彼女の親の田舎と言うその村に行った時のことを。
そこでオレは奇妙な事件に巻き込まれた。可愛い女の子だった夏菜は大蛇に変身するわ、大蛇の親分の竜は出てくるわ、何だか訳が分からなかったのだけど。
その時に手に入れたのが勾玉だった。杉浦の持っているものとは多少色合いが違うものの、明らかに同じパワーを感じる…ように思う。
旅の途中で道連れになった静川さんはこの玉を『竜の勾玉』と言ってた。
そして村は洪水と共に消えてしまった。後から聞いた話だと、その場所には初めから水無瀬村なんて所はなかったんだ。地図にも載っていなかったし。
もう、本当に何が何だか分からないことばかりだった。
「あの場所に封じられていたのは蛇竜だろ? 封印を解いてよく無事だったね」
「お前、何者だ? もしかしてあの大蛇の仲間か?」
身構えるオレに、杉浦は薄笑いを浮かべながら答えた。
「よしてよ。彼らは所詮竜族の下僕達だよ。僕達にとっては敵。忌むべき一族だよ」
杉浦は手の中の勾玉をそっと握り締めた。
「でも、オレを助けてくれたのは竜だった…」
つぶやくオレの言葉を、杉浦は聞き逃さなかった。用心深そうな目をオレに向けてきた。
「会ったの、竜に?」
会ったってわけでもないけど、それを素直に答えるつもりなんてない。
返事をしないオレに、杉浦はやれやれといった様子でつぶやいた。
「何で君みたいな人に勾玉が反応したのか分からないよ。壊れたのかな」
また腹が立った。
「どっちでもいいか。とにかく返してくれない? 下手に扱われたくないんだ。父竜の封印を解かれてしまったらおしまいだからね。僕が預かるよ」
言って杉浦は片手をオレの方へ差し出した。
「持っているんだろ」
何で分かるんだ、こいつ。