第3章
古寺への招待
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「分かんないわよ。あたし達と同じ目的で避暑に来ているかもしれないし」
「第一、あたし達にしたって子供だけで泊めてもらえるの?」
「中学生だって大人料金取られるってのに、大丈夫よ」
「『18才未満の方は保護者同伴でお願いします』だって」
 チラシの隅に書かれていた文字を読み上げた私に由加はほら見ろと、短く返す。

「あたしのうちはダメよ。夏に沖縄行って長期休暇を使い果たしたって言ってたし」
「あ…うちもお店あるし」

 さつきの家は酒屋さんをしている。秋祭のこの季節は、何かとせわしないらしい。その間はさつきも妹のかんなちゃんも手伝いに駆り出される。さつき一人遊ぶのはともかく、親となると難しいかもしれない。

「かと言ってうちもね…」

 パパは東京の学会に行ったきり帰って来ないし、ママは穏便だから来てくれないだろうし。

 はあ、と溜め息をついたところへ一人、ノックもせずに乙女の部屋へ入って来る礼儀知らずがいた。

「美奈ぁ、昨日買い溜めしておいた冷凍庫のアイスクリームなぁ」

 みんなの視線が一斉にそちらへむいた。

「お邪魔しています」

 一番に声をあげたのは由加。続いてさつきも居住まいを直してにっこりする。

「こんにちは、お兄さん」
「あ、いらっしゃい」

 何やってんの、あんた達は。

 入って来たのは私のお兄ちゃんの静川聖輝(しずかわせいき)。大学一年生。妹の私が言うのも何だけど、見た目がちょっとイケてるので、由加もさつきもちょっとしたファンだ。

 と、私達三人の視線が合う。そして私が一番にお兄ちゃんを指さして――。

「これで手を打たない?」
「賛成!」

 さつきがすかさず同意する。と、由加も両手を胸の前で組んで。

「どこへでもついて行くわ」

 決まったわね。

「じゃあさっそくここへ電話して予約取ろうよ」
「そうね。こんな格安なお宿、あっと言う間に予約でいっぱいになっちゃうかも」
「やっぱみんなで出掛けた方が楽しいもんね」
「ねー」
「こら待て、何の話だ」

 あ、忘れてた。


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