第2章
かわいた雨
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 村の中心部近くまで来て、オレはふと足を止めた。

 誰かいる気配が感じられた。それも一人や二人じゃない。数十人はいる。

 オレは足音を忍ばせ、その気配の感じられる方向へと恐る恐る進んだ。

 それは村の中心部、集会所前の広場だった。そこはそれこそこの小さな村の全員が出揃ったかのような人出だった。本当に村人全員だったのかもしれない。

 真夜中の集会は異様なモノだった。中央に祭壇を設け、人々はそれに向かって拝むかのように跪き、頭を地につけていた。そして祭壇の中央には一人の少女の姿があった。夏菜だった。

 オレは思わず足を踏み出した。

 足元で枯れ木の折れる音がした。

 しまったと思ったと同時に、村人たちと夏菜が振り返る。

 ぞっとした。

 村人の目は赤く輝き、オレを見付けるとじりじりと歩み寄る。

 オレは慌てて方向転換し逃げようとしたが、何者かにぶつかる。見るとそれは赤い目を光らせた彼らの仲間だった。

「は、放せ、このーっ」

 オレの腕をつかむそいつの力は強かった。そして、オレをもっと不気味がらせたのは、そいつのぬるぬるした手に人の体温が感じられなかったことだった。

 オレは力任せにそいつの足を蹴飛ばした。

 だけど、相手はにんまりと白い歯を見せて笑うだけで、びくともしなかった。

 集まった人込みを掻き分けるようにして、夏菜がオレの前へ立った。

「よく帰って来てくれたわね。碧海」
「か、帰って来たわけじゃない」
「あなたが帰って来てくれないと、私が生け贄になるところだったの」


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