第2章
かわいた雨
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慌てて外へ出ようとオレは出口に近づく。
そこには大蛇が一匹釜首をもたげ、オレの方をじっと見ていた。
冗談じゃない。これって袋のネズミって言うんじゃないのか。
オレは仕方なく後ずさった。
古い御堂は隙間だらけで、その間を透かして月明かりがオレの足元をかすかすに照らす。床はオレが動く度、ギシギシと音を立てる。大蛇は次第にオレに近づいて来る。
もう後がなかった。
その時オレは何かにつまずいて後ろ手に倒れこんだ。
それは一辺15センチ位の箱だった。そしてその弾みで開いてしまった蓋の中に入っていた物が、オレの目に止まった。
一言で言ってしまえば不細工な形のペンダントだった。太ったオタマジャクシの様な形の玉をつけている。
オレはそっとそれに手を伸ばして、掴みあげた。
オレの前にいた大蛇の脅える姿が目の端に見えた。瞬間、オレの目は何も映さなくなった。
正確には眩しさの余り何も見えなくなってしまった。
その玉が青白く輝き始めたんだ。
この世の有りとある邪悪なものを溶かしてしまう程、清らかな色をした光だった。
思わずオレはそれを放してしまった。それがオレの中にもある邪な心のためだったのか、それとも単にあまりの強い光に手が震えてしまったのかは分からない。
だけど、それはオレの持ってはいけないもののように思えたのだ。
手を離すと、光は消えた。そこにいたはずの大蛇もどこへ逃げたのか姿を消していた。
オレは慌てて入り口に駆け寄った。
外は月明かりだけがあった。