第2章
かわいた雨
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風の静かに流れる音がする。
山の樹木をゆらしているのだろうか、夜の気配はその音だけしか聞こえて来なかった。
オレはクーラーもない暑い夜に、なかなか寝付かれなかった。隣では静川さんがすやすやと心地よさそうな寝息を立てている。
田舎って夜になればもっと涼しくなるものだと思っていた。オレはもう一度寝返りを打つ。
と、襖の少し開いているのに気付いた。この部屋にいることをじーさんやばーさんに見られると話がややこしくなるってんで、きちんと閉めて横になったはずなのに。
面倒だと思ったが、襖を閉めようと布団からはいずり出た。もしこんな格好でなく、ちゃんと立って閉めに行けば、オレはそれに気付かないで済んだのに。
オレの目は襖の向こうからじっとこちらを伺っていた二つの赤い目を捕らえた。
「ひっ」
低くオレの喉が鳴った瞬間、それはオレに飛びかかって来た。
目を閉じる寸前に見たその赤い目の正体は、胴回り二メートルはあろうほどの大蛇だった。そしてそれはオレの頭の上へ落ちて来た。
オレは叫び声を上げてその場で腰を抜かしてしまった。まだ気絶しなかっただけましな方だ。誰だってあれだけ大きな蛇に飛びかかられちゃ、理性などぶっ飛んでしまうはずだ。
オレはぶざまな格好をしていたに違いない。美少年・清水碧海クンもかたなしだ。大蛇に組しかれて成す術も知らずのたうっていたのだから。
だけど大蛇は、それっきりぴくりとも動かなかった。オレは恐る恐る目を開けてその長いものに目をやった。それは既にその赤い目を閉じ、首を垂れていた。
体をずらすとオレの上からごろりと床に転げ落ちた。
一体何がどうなったのか、さっぱり分からなかった。