第2章
かわいた雨
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「竜神ってね、この村では恵みの雨をもたらす水神さまなのよ」
その夜、夏菜はオレに語った。
今ではもう伝説でしかないが、遥か昔この地に一頭の竜が降り立った。それは青い青い竜だった。竜は雲を呼び雨を降らせた。雨の降らない日々の続いた後だったので、村人は喜び、竜を神として祀ったと言う。
だけど竜は気まぐれで、ここに長くは留まろうとしなかった。
その時村人達の取った方法というのが――。
「いけにえー?」
「そう。若い娘を竜神に捧げるの。何人もの娘が竜神の前に捧げられて……」
それを竜は怒って拒んだと言う。
「もったいなーい」
「清水くん、真面目に聞いてる?」
「うん、聞く」
が、差し出された娘達は次々に子を産み落とした。人ならぬ形をした赤子を。
「この村の人間は、その竜の子の血を引いているって言ってたわ」
そう言ってのけた夏菜をオレは見返した。