第2章
かわいた雨
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「和也のヤツ、大ウソ教えやがって」
静川さんってばさっきからこればっかりだった。
何でも友達から聞かされてここへ来たらしいが、どうやら何か行き違いがあったらしい。
ここの所誤解だったのか、大ウソを教えられたのか、詳しいことはオレには関係無いので放って置くことにした。でも、バス停にはバスの発車時刻ははっきりと書かれてあったし、それをきちんと確かめなかったのは自分が悪いんじゃないだろうか。
結論、人は見かけによらないものだと。マジでシリアスしか似合わないように見えたのに。
結局、静川さんは夏菜のじーさんの家に泊めてもらうことになった。
「おや、お二人ともお出掛けかね」
玄関とも土間とも区別のつかない上がり口で靴を履いているオレと静川さんに、丁度通り掛かったじーさんに声をかけられた。
オレときたら夏菜のじーさんだってのにどうもこの人を好きになれなかった。どこがどうというのではなく、虫が好かないってヤツだ。
「ええ、近くに竜神を祀っているという御堂があると聞いたものですから、見に行こうかと」
そう静川さんの言った時のじーさんの表情をオレは見逃さなかった。
何と表現したらいいのだろうか。見られたくない所を見られてしまった、不快な、とても不快そうな顔をした。
そのことに静川さんも気付いただろうか。