■ 遠い約束 ■
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「…気にするな」
気を取り直して、フェザンは中に入る。
「マキアスにあんなことを言わせたのは僕だね」
セレムも、マキアスが二人を心配して言った言葉なのだと気づいていた。
「記憶が戻った方がいいのかな」
呟くセレムの声は抑揚を感じられなかった。
「フェザン、前の僕が好きだった?」
突然振り向いて聞かれる。一瞬、答えられずにいると、視線を逸らされた。
「ごめん、意地悪なことを聞いたね。僕、今日も魔道の勉強しなきゃなきゃいけないから、また、後でね」
そう言ってセレムは机の上の書類を取ろうと振り返る。と、くらりと身体が傾いた。
「セレム…?」
そのまま床に崩れ落ちるのを、フェザンは慌てて抱きとめた。
「神経疲労ですね。慣れないことばかりで疲れが出たんでしょう。2−3日休ませればすぐに元気になりますよ」
治癒の魔法をかけながら、サラはそう言った。
眠っているセレムは顔色が優れなかった。
いつも何でもないような様子を見せていた。一生懸命な姿が思い起こされる。考えて見れば一日も休むことがなかったように思う。上手くないからと毎日少しずつ少しずつ訓練して。それでも上手くいかなくて、悩んで苦しんでいた。
これだけ頑張れば十分ではないか。それなのに軍は、レイヴァンは、まだ何を求め期待するのか。
「そうか…」
そう静かに言ったのはレイヴァンだった。
セレムをサラに任せて、フェザンは本陣へとって返した。一応報告のためにとレイヴァンの元を訪れたのだ。これ以上無理をさせるなとの一言を言いたかったこともあって。
「もう、限界だろう」
レイヴァンの言葉にヒースもうなずく。
「そうかも知れんな」
フェザンは二人の短い会話に眉を寄せる。そのフェザンに気づいて、レイヴァンは落ち着いた口調のまま言った。
「お前はセレムによくしてくれた。感謝する」
「何が言いたいんだ?」