■ 遠い約束 ■
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「言われてみりゃ、ぜんっぜん魔法になってねぇよな」
素人目にも見て分かる。セレムは風をなびかせているだけだった。
取り敢えず魔道の力を何とかすればセレムの不安も取り除けるだろうと踏んで特訓をしようと言うことになったのだが。
「精一杯やっているつもりなんだけど」
「だろうな」
多分、訓練次第で上手くなるとは思えた。フェザンは少ししょげたままのセレムの肩にポンと手を置く。
「ま、いいんじゃねぇの。まるっきりゼロってわけでもねぇんだしよ。戦士はたくさんいるし、後の戦法は太子に任せときゃ。一人分くらい他の連中でも何とかなるって」
頷いてはみるものの、元気の出ないセレムに安心させようと笑って見せる。見せてから、柄にもないことをしたと慌てて背を向ける。
「もう、帰ろうぜ」
今日はこれから何をしたものかと呟きながら先を歩いていて、セレムが後をついてきていないことにふと気づく。振り返るとまだ深刻な表情を向けたままだった。
「どうした?」
「いつも優しいよね、フェザン」
何を言い出すのかと思ったら、とんでもないと思えるセレムの言葉にフェザン自身面食らう。
「フェザンって、前の僕とも仲良かったんだ?」
「え…それは…」
随分違うと言いかけて口ごもる。どう説明できようものか、今までの関係を。言葉に詰まっているとセレムは柔らかに笑う。
「だったらちょっと妬けるよね。今の僕は昔のことを覚えていなくて、だけどフェザンにとって僕は昔の僕と一緒でしかなくて…」
だから自分に優しいのだろうと呟く。