■ 遠い約束 ■
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少しずつではあるが、セレムは軍に馴染んできているように見えた。しかしそれは傍から見ただけのものだとフェザンは気づく。
あの寂しそうな笑顔の数も少なくなり、ため息の数が増えていた。
それとは逆にフェザンの気持ちは自分でもはっきり分かる程にこのセレムに引かれていった。一緒にいる時間が多くなり、ずっと側にいたいと思う気持ちに気づいて、今だけなのだと何度も自分に言い聞かせる。
いつか元のセレムに戻ったら、セレムはレイヴァンの元へ戻るのだろう。
そして、自分はまた以前のように喧嘩ばかりするようになるのだろう。いがみあって、また、殴って。自分の思いを告げることなど決して叶わない関係に戻るのだ。
だから、せめて今だけと、何度も繰り返しながら。
「じゃあな」
習慣になってしまったセレムの送迎。いつものとおり送り届けて、フェザンはセレムに背を向ける。そのフェザンをセレムがふと呼び止める。
「あの…フェザン…」
控えめな声に振り返ると不安そうな顔があった。
「何だ?」
何か言いあぐねている様子を見せるが、返って来た言葉はいつも通り。
「ううん、…おやすみ」
そう言えばあれから何日経つのか。普段はもうすっかりここに馴染んでいるように見えるのに、二人きりになると口数が減っていた。自分にも話せない思いがあるため、フェザン自身の言葉数も減っていたのも要因かもしれないが。
言うつもりはない。ただこうして側にいれればいいと思っていた。側にいて力になってやれることが純粋に嬉しかった。
それなのに。
セレムと別れて帰る道すがらも、床についてからも胸の奥の深い場所が痛んだ。最近、ずっとこんな調子だった。