■ 遠い約束 ■
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「何?」
湖の側まで来て座り込んだ。そのフェザンに、セレムは不思議そうな目を向けてきた。
「ん…いや」
ジロジロ見つめ過ぎていたことに気づいて、フェザンは慌てて湖に目を向ける。
陽光を反射してきらめく湖面がまぶしかった。
そんなフェザンの様子を訝しむでもなく、セレムは笑顔を向けてくる。
「軍隊って、窮屈だよね。何だか難しそうな顔をした大人ばかりだし」
大将であるレイヴァンは20歳を越えたばかりだった。しかし、15やそこらの自分達からすれば見上げるような立派な大人に見えた。
「ああ、ここは戦場だからな」
死と隣り合わせなのだ。自然と顔付きも難しくなろう。かく言うセレムも、フェザンからすれば、記憶を失う前は難しい人物の一人だった。
「僕、こんな所で生活してたんだ…」
「おお、馴染んでたぜ、すっかりよ。自分の役割をきっちりこなして、大将に柔順な魔道士だったしな」
フェザンの言葉にセレムは居心地悪そうにする。
「他人事みたいだ」
「他人事だろ? お前は覚えてねぇんだしよ。いいんじゃねぇの、それで」
言って、ゴロリと草の上に寝転がる。そのフェザンを見下ろして。
「フェザン…ありがとう」
「は?」
セレムの言葉に顔を上げると笑顔とぶつかる。少しだけ寂しそうな陰を残してはいるが、それでも安心したような表情がはっきりと分かる。
その表情にまたフェザンの胸が高鳴る。
違うと分かっているのに。それでもひかれていく気持ちを押さえることはできなかった。