■ 遠い約束 ■
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「ね、今度の日の曜日に一緒に薬草を探しに行こうって約束したよね」
「お、おい…」
フェザンが腕を引っ張って止めようとするるのをマキアスは振り払う。そんな様子を見やって、セレムは小さく答えた。
「…ごめん」
途端にマキアスの大きな瞳に涙がにじむ。
「違うよ、セレムが悪いんじゃないよ」
分かってはいるのだ。しかしそれでも感情の伴わないことはある。
「僕…もう帰るね」
「おい、マキアス」
いたたまれなくて、泣きたくなくて、マキアスはフェザンの制止も聞かず、足早に病室を後にした。
その後ろ姿に舌打ちして、フェザンはセレムを振り返る。
気落ちしたセレムがうつむき加減でつぶやく。
「ごめん、きっと君達は僕にとって大切な友達なんだよね。だのに何も覚えていないんだ」
「しょーがねーだろ。お前のせいじゃねぇよ。それに」
責任の半分は自分にもあると言いかけて、その代わりの言葉を探す。
「そんな顔してんじゃねぇよ。元のお前はもっと高慢ちきでいけすかねぇ野郎だったんだ…っつっても覚えてねぇよな」
視線を落としがちなセレムに、フェザンは小さくため息をつく。
記憶をなくしてしまうと言うことは、性格までも変わってしまうものなのだろうか。フェザンにはまるで別人のようにしか思えなかった。