■ じらされて ■
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先に使っていいと言われたシャワーを浴びて室外へ出たとき、悪夢は始まった。
シャワー室の前に潜んでいたレイヴァンが、突然襲いかかってきたのだった。
「な、何をする?」
驚いて一発顔を殴ろうとしたが、簡単にかわされてしまった。
レイヴァンはまだしっとり濡れた身体のセレムを、軽々と抱き抱えるようにしてベッドに押し倒した。
「レイヴァン太子…!」
焦ってセレムは暴れる。が、両腕を取られ、上からのしかかられ、あっと言う間に身動きが取れなくなってしまった。
「何だ、この俺とふたりっきりの休暇が、本当にただの休暇だと思っていたのか?」
見下ろしてくるレイヴァンの冷たく青い瞳がセレムを捕らえる。
ドキドキするような眼差しに射竦められて、セレムは一瞬、ボーッとなる。が、次の言葉に我に返る。
「ここからは剣の稽古だ。俺の大剣を存分に味合わせてやるから、覚悟しておけよ」
言ってレイヴァンは自分のものをちらりと見やる。
「ふざけるなっ」
しかし、抵抗しようにも力でかなう相手でもなく、セレムは両腕をまとめられ、あっと言う間にベッドの支柱にくくりつけられてしまった。
まだシャワーを浴びたばかりの、腰にタオルを巻いただけの格好をレイヴァンの眼前にさらけ出し、ひどく恥ずかしい思いがした。
「俺はこれからシャワーを浴びてくる。その後じっくり可愛がってやるからな」
「いるもんかっ!!」
何と否定しようとも、レイヴァンは聞き入れる気はないようだった。
そのままシャワー室に入ろうとして、ふと、立ち止まる。
「そうだ、忘れるところだった」
そう呟いてとって返し、自分の荷物の中をかきまわす。その中に、何かを見い出してにんまり笑う横顔がセレムの目に映った。
また、良からぬことに違いない。
「これを塗ってやる」
手のひらに乗る程の小瓶は、魔道で使う薬品入れら似ていた。
「何だか分かるか?」
レイヴァンの物言いに、セレムは思わず身を引く。
「昨日、ヒースがくれたものだ。南海の島国で密かに手にいれたそうだ」
言ってレイヴァンは瓶の蓋を外す。途端に広がる嫌な匂い。
レイヴァンは楽しそうにその中に指を入れ、透明な薬を取り出してセレムに見せる。
レイヴァンは瓶をサイドテーブルに置くと、セレムの足元に馬乗りになる。
「良く効くそうだぞ」
そう呟きながら、セレムの腰に巻いているタオルをめくった。
「や…やだ…」