■ 野犬 ■

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 犬達の舌使いがビチャピチャと暗闇に木霊する。


「やああん…やめて…あ…はあん……や…だあ…」


 こんな犬に嬲られるくらいなら噛み殺された方がマシだった。


 哀れにもセレムはその野犬達のいたぶりに事実、感じ始めていた。


 次第に堅く太くなっていく己自身を感じながら、セレムは硝子色の涙を零していた。


「…レイ…」


 脳裏に浮かぶのは恋しい人の顔。


「助けて…」


 しかしセレムの身体はその意に反して、次第に興奮し始める。畜生に犯されるのだ。


「い…いやあああああ―――――っ 」


 舌のざらつきが、セレムを達しめた。


 セレムは腰を前方に突き上げ、自身の精の溢れ出すのを見た。


 犬達によって辱められた跡である。


 そのセレムの先端から滴り落ちる蜜を野犬達は競って嘗め始める。


 犬達はセレムのモノを一滴たりとも零すことなく嘗め上げていく。


 やがてセレムの蜜は流れを止める。セレム自身も休息の場所へと横たわり始める。それに合わせて犬達の動きも止まる。


 犬達は糾弾したセレム自身から後ずさった。


 セレムはほっとして犬達を見遣る。


 と、そこに――。


「!?」


 そこにはセレムの身体よりも大きな山犬がいた。いや、それは既に妖獣の類いであった。


 それはゆっくりとセレムに近づいて来る。


 全身が漆黒の毛で覆われ、目だけが欲望にぎらつき、鋭い牙の覗く口からは、涎を垂らしていた。


 荒い鼻息がセレムの全身を凍りつかせた。


 今度こそ、今度こそ殺される――。


 セレムはあられもない姿のまま、力の抜けた体を動かそうともしなかった。


 もう獣達に弄ばれた自分、このまま生きていられよう筈がなかった。


 ――レイ…!


 もう一度会いたかった。冷たくきれいな青い瞳が、いつも優しくセレムを見つめていた。


 セレムは今度こそギュッと目を閉じた。


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