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はしらのはなし・51

 26番は大学生にパンチされたそうですが、わたし51番はキャッチボールの相手と申しましょうか、しょっちゅうボールをぶつけられていました。

 このボールの跡は、誰か一人のせいというわけではないのです。近所の子供がある年頃になると、ぽこんぽこんと私にボールをぶつけて遊ぶのです。その子が大きくなって、キャッチボールできる友達を見つけてしまうと、わたしは忘れられてしまう。けれども、そのうちまた、わたし相手にボール遊びする子が出てきます。その子もいつか、友達を見つけて私を忘れるでしょう。

 子供たちが私を忘れることが淋しいか?そんなことはないですよ!だって、友達ができるなんて、一番うれしいことではありませんか。それに、ボールを当てられるのはやっぱり少し痛かったしね、ハハハ・・・。


(はしら51番が撤去される3ヶ月ほど前のこと、 誰かが落とし物の子供の靴に草の実をのせて、オブジェ作品のようにして置いてあった)


(2004年11月/記)