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湘南軌道を歩く  15

 二宮の商店街には、湘南軌道の二宮駅であったという建物が民家として残っているということで、『鉄道廃線跡を歩く 2』には写真も出ていた。その前の道を私も通ったのかもしれないのだが、その時はその建物の存在を思い出すこともなく、「二宮の商店街には焼きたてパン屋が2軒あるな、いいぞいいぞ」などと全く関係のないことを観察しながら歩いていた。やがて、JR二宮駅に到着した。

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 二宮駅の南口に出ると、小さなロータリーとなっており、まん中の大きな木の下に「ガラスのうさぎ」像がある。子供の頃に読んだことのある同名の本の舞台がここなのだ。防空頭巾をかぶった少女の像が抱いているのは、本当にガラスでできたうさぎだった。物語の内容はほとんど覚えていないけれど、町が空襲に遭い、少女が自分の家のあった所の瓦礫を掘ると、大切にしていたガラスのうさぎが熱で溶けているのを見つけた、というシーンだけ、記憶に残っている。
 せっかくなので、海を見てから帰ろうと思う。海水に触れられたら一番いいけれど、このあたりは海べりを西湘バイパスに占められており、海岸へじかに下りられるのか、わからない。とにかく住宅街を南へ向かうと、向こうに海の色が見えてきた。行き止まりの駐車場のところの高みから西湘バイパス越しの海をしばらく眺めた。出発点の秦野からは丹沢・大山を眺め、到着点の二宮では相模湾を眺めることができ、なんだかバランスがとれたような気持ちになった。 (終わり・2001年10月)