No.12

2001年11月30日
弁護団つうしん 発 行
ハンセン国賠訴訟西日本弁護団

熊本市京町2−12−43
TEL096-322-2515
FAX096-322-2573

  

 
   11月16日 第4回厚労省協議
   みんなのたたかいで大きな前進
    全国から原告・弁護団・支援が300人

 11月16日、東京厚生年金会館で、第4回厚労省協議が桝屋副大臣出席のもと開催され、全国から300人を超える原告、支援の人などが傍聴しました。
 この日の協議では、これまでの作業部会等での厚労省とのやり取りを経て、厚労省が新たな観点での方針を提案するなど、大きな前進がありました。

謝罪・名誉回復
 謝罪・名誉回復では、これまで厚生労働省のみの謝罪と厚労省は言っていましたが、今回衆参両院の回答を待って、厚労省の謝罪と両院の謝罪、さらに控訴断念時の内閣総理大臣の談話を併記して掲載する方向で進めることが確認されました。

在園保障
 在園保障については、これが法的責任に基づくものであること、入所者の意思に反して転園させることはないことが、桝屋副大臣の口から語られました。対立のあった明文化の問題も、基本協定書を作ることを厚労省の側で次回までに検討してくることが確認されました。

社会復帰・社会生活支援
 最大の懸案になっていた社会復帰・社会生活支援では、原告団が提案していた1人28万円の生活支援を前提に、厚労省から、既に退所している者と新規に退所する者を区別して、さらに世帯構成に応じて、月額176100円から422600円までの金額を支給することが提案されました(ただし所得制限あり)。交渉団側は、1人28万円に達しない人があることや、所得制限があることを考慮しつつも、今後医療保障や住居保障が整備されることを条件に、この提案を受け入れることを回答しました。既退所者への社会復帰準備金の遡及的支給についても、どういう仕組みが可能か検討するということが副大臣の口から語られました。

真相究明・再発防止
 混迷を深めていた真相究明・再発防止では、まず最初にこの分野でも他の課題と同様に作業部会を作って今後協議を進めていくことが確認されました。さらに、真相究明・再発防止の趣旨をふまえないままでS氏を中心とする研究班が進められようとしていることに、原告側から強い批判が相次ぎました。

なんとしても年内に「基本協定書」調印を
 交渉団は、年内に各課題について一応の決着を見て、基本協定書を作成することを強く求めました。厚労省側もその方向で検討してくることを約束しました。

 今回の前進は、9月21日の副大臣面談を突破口に、全国の原告の皆さんの奮闘があって、勝ち取ったものです。特に、これまで入所経歴を隠して社会の中で息をひそめて生活してきた退所者の皆さんの努力と団結の力は、厚労省を圧倒し、この秋の陣のたたかいを、決戦と呼ぶに相応しいものにしてくれました。まだまだ、課題は山積していますが、引き続き年内の基本協定書作成をめざして、力を合わせましょう。
    
  
11月16日 厚生労働省前の要請行動

  
左 第4回厚労省協議に臨む全原協の代表者   右 座長の桝屋副大臣


協議の傍聴に詰め掛けた原告・支援者ら


11月2日原告本尋問
あるべき人生を送れなかった・・

            入所経験のない原告

 11月2日、熊本地裁で入所経験のない原告の原告本尋問があり、4人の原告が、時には涙で声を詰まらせながら、被害を語りました。

 遺族・入所経験のない者については、5月11日の判決では対象者がなく、国は「判決を受けたい」として和解を拒否し、審理が続いていました。

 この日の尋問では、入所経験のない原告は、隔離こそ受けていないけれど、社会の中に暮らしてきたからこそ、その偏見や差別に直接さらされ続け、このため、自己の病歴を家族にさえ隠し、社会に隠れて生きなければならなかったこと、しかも、隔離政策は外来治療を前提としていなかったために治療を受けることすら困難であったこと、などが明らかになりました。

 これらの被害は、「あるべき人生を送れなかった」という意味では、他の入所者・退所者らの受けた被害と何ら異なるところはありません。国の和解拒否がいかに不当なものであるか。誰の目にも明らかになりました。

 12月7日に結審の予定です。



 本人尋問内容はこちら  





全面解決を今年中に
     実現することをめざして

 たたかい取った「秋の陣」
   国会ローラー、
     厚生労働省申入れ、
        11/1 熊本大集会


国を揺さぶった国会ローラー

 10月15〜16日の両日、全国原告団・弁護団は、支援の皆さんの応援を得て、国会ローラーを実施しました。全国から100人を超える原告が東京に集まりました。 国会ローラーと併行して、自由、共産、公明、社民、民主の5党のヒアリングも行いました。さらに、16日の朝には、厚生労働省の前での抗議行動も行いました。
 重層な行動に、さすがの国も慌て始めました。これまで、厚労省が開催を拒んできた第4回協議も、この国会ローラーの間に実施することが決まりました。


私の骨はふるさとの山へ
自由党ヒアリング(10月15日)でのSさん(菊池恵楓園)の発言

 「私はできることなら退所したいです。でもそれがかなわないならば、私が死んだらその骨を、ふるさとの山にまいてください。故郷の山からだったら、ふるさとの景色も見えると思います。私は、ずっと園にいて、どこにも行ったことがありません。今日は、一大決心をして、生まれて初めて飛行機に乗ってここに来ました。もし私の骨が山にまかれれば、その骨は川に流れて、海にたどり着き、私は世界中を旅することができるでしょう。それが私の夢です。園の納骨堂には入りたくありません。どうか、私たちを、ふるさとに返してください。」


11月1日 熊本で「秋の陣」大集会!
 「父の無念を晴らしたい」
     遺族原告が初めての訴え


 熊本テルサで開かれた「秋の陣」大集会には、太鼓隊に先導された車いすの原告を先頭に、原告や支援約450人の人が集まりました。
 集会では、この日初めて、公けの場所で名前を名乗って、遺族原告である赤塚興一さんが家族の被害を訴えました。「父の無念を晴らしたい」という切々とした訴えに、多くの人が涙を誘われました。
 他に、沖縄愛楽園の宮里新一さんが自作の歌を披露、菊池恵楓園のお2人が判決後の思いを語るなど、原告大活躍の集会になりました。




弁護団ダイアリー

9/24〜25  宮古南静園説明会
9/25    沖縄愛楽園説明会
      真相究明委員会「0会」(京都)
9/26    在園保障作業部会
9/27    弁護団会議(熊本)
      ハンセン議懇世話人会
9/28    弁護団会議(熊本)
      熊本地裁弁論・第6回和解成立(71人)
10/1    厚労省に対し第4回協議開催の申入れ
10/3    在園保障チーム会議
10/4    22次提訴(9人)
10/5    奄美和光園説明会
      ハンセン議懇総会
10/7    星塚敬愛園説明会
10/10    弁護団会議(福岡)
10/11    沖縄集会
10/15〜16  国会ローラー・政党ヒアリング
10/18    熊本地裁進行協議・第7回和解成立(7人)
      弁護団会議(熊本)
10/19〜20  大島青松園説明会
10/20    沖縄退所者説明会
      沖縄愛楽園説明会
10/26    宮古集会
10/31    23次提訴(42人)
      弁護団会議(熊本)
      在園保障作業部会
11/1    弁護団会議(熊本)
      11/1大集会(熊本)
11/2    熊本地裁原告本人尋問(4人)
11/7    社会復帰・社会生活支援作業部会
      交渉団会議(東京)
11/9    日弁連「ハンセン病問題についての特別決議」採択(人権大会・奈良)