伝説紀行 千栗八幡 みやき町(北茂安町)
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僕は筑紫次郎。筑後川のほとりで生まれ、筑後川の水で産湯を使ったというからぴったりの名前だろう。年齢や居所なんて野暮なことは聞かないでくれ。 筑後川周辺には数知れない人々の暮らしの歴史があり、お話が山積みされている。その一つ一つを掘り起こしていくと、当時のことや人物が目の前に躍り出てくるから楽しくてしようがない。行った所で誰彼となく話しかける。皆さん、例外なく丁寧に付き合ってくれる。取材に向かうときと、目的を果たして帰るときとでは、その土地への価値観が変わってしまうことしばしば。だから、この仕事をやめられない。 |
千栗をちりくと読むわけは? 佐賀県みやき町(北茂安町) 佐賀県北茂安町(05年3月よりみやき町)の小高い丘の上に、由緒ありげなお社(やしろ)が建っている。本殿正面には、「千栗八幡宮」の額縁が掲げられていた。土地の人は、このお宮さんのことを、「ちりくのはちまんさん」と呼んでいる。「ちくりはちまん」なんて言っちゃいけないんだって。そのわけを物知り博士に質してみた。写真は、県指定の文化財一の鳥居 弓の先に白鳩が止まった 「千栗」を「ちりく」と読むわけを知るには、遠い奈良時代の神亀元(724)年まで遡らなければならない、と博士は宣(のたま)うた。舎人親王(とねりしんのう)という偉いお方が「日本書紀」を撰上された頃のことだそうな。 神がチリクに祀れと 「春成、起きよ」 八幡神…八幡宮の祭神。応神天皇を主座とし、弓矢の神として尊崇され、古来広く信仰されてきた。 逆さに生えた1000本の栗 チリクと言われても、春成には何のことやらさっぱり見当がつかない。昨日弓の先に白鳩が止まった場所に立つと、目の前に異様な樹林が出現した。栗の木の林である。しかもその木たるや、みな逆さに立っている。はじけそうに稔った栗の実も、すべて逆さに生っている。栗の木を数えたら、丁度1000本あった。 神社正面から車道を通って境内に入る。参道は、そのむかし大いに賑わったであろう門前の佇まいが今もはっきり残っていた(写真)。海抜30bというが、境内に入った途端冷気を感じるから不思議である。 千栗八幡宮に関する事項 在所…佐賀県みやき町白壁(海抜30b)。参道階段は145段。 |