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第二十二話 ウェストカー・パピルスの物語 

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 前回からの続き。

 魔術師ジェディにどぇらいこと言われたクフ王は、、是非とも真実を見届けたい、と思いはじめます。
 その子供たち、やがてこの国の王権を受け継ぐという運命の子供たちが生まれるのは、いつになるのか?

 ジェディ「冬季第1月15日(現代暦で言うと11/30)です。」
 クフ王「なんと、それでは川の水位が下がってしまっておるな…。」

 冬は、ナイル川の増水が終わったあとの季節です。そして、エジプトの交通は船に頼っていたので、運河の水位が下がると、外出するとき、お乗り物を使えなくなってしまうのです。
 王専用リムジン船、使用不可能!
 遠足が中止になったみたいに残念そうな王様のため、ジェディは、その日が来るまで運河の水位を一定に保ちましょう、と言うのでした。
 …川の水上げるって、アンタなにもんですか。


 そうこうしているうちに、問題のレドジェデトが産気づく時がやってきました。かなりの難産のようです。このままでは、子供も母体も危険です。
 それを見ていた太陽神、ラーは。

 ラー「王の誕生には奇蹟がつきもの。お前たち。行ってレドジェデトのお産を助けてくるのだ!」

…と、神々を召還。
 呼び出された4人の女神+1人。イシス・ネフティス・ヘケト・メスケネト・クヌム。
お産の女神であるヘケトとメスケネト、人間創造の神クヌムはともかく、何でイシスとネフティスも? やっぱ、インパクトの問題か。

 クヌム「あのー… なんでわざわざ出張サービスなんスか? しかも、こんな大人数で行かなくても、ヘケトとメスケネトだけでいいんじゃあ。」
 ラー「いーや。これから生まれる3人の子らは、われら神々のために立派な神殿を建て、供物もたっぷり供えてくれるはずなのだ。神を崇める立派な下僕、その育成は誕生からじゃ! 文句言わずに行って来んかい。」
 クヌム「……。」

 ラー様、相変わらず利益優先。
 そんなこんなで送り出された神様たちは、ただ人間になりすますだけではなく、気合い入れて仮装して出かけました。

 イシス「いい、皆?! 人間の町に行ったら、私のことは団長と呼ぶのよ!」

女神たちは流れの楽団になりすまし、楽器を装備して神官の家へ。唯一の男性、クヌムは荷物持ち。

 クヌム「なんでやねん…。」

お産の手伝いに行くんだから、すなおに産婆の格好したらどうですか、なーんてツッコミはナッシング。
 たどり着いたラー神官、ラーウセルのお宅では、奥様が難産の床で苦しんでおりました。生まれそうで生まれない。旦那さんは付き添いでヘロヘロです。

 イシス「ご安心なさい。私たちはお産の手助けも心得ております。産婆がわりにお手伝いいたしましょう。」
 ラーウセル「た、助かるよ!」

 女神たちは、お産を助けるため奥さんのレドジェデトと部屋にこもりました。
 男性のクヌム神はお外で待機中。難産の妻を心配する旦那さんに付き添って、励ましてます。こまやかな気配りと、行き届いたサービスが売りですエジプト神話。

 しかし、どうやら、本当に難産のようです。
 赤ん坊が元気よすぎて、なかなか出てきません。お産の女神たちが優しくいざなっても、言うことききません。このままでは母胎も危険に…
 と、その時!

 イシス「あまり元気よくし過ぎるものじゃないわ… 出てきなさい…?」(キラーン)

 大女神イシス様、なんと腹の中の赤子を脅しました。そんなんで大丈夫なん?
 ええ、大丈夫なんです。イシスは言霊の女神様。彼女の言葉は魔法の言葉。
 すっぽーん!
 子供が生まれたァ! しかも飛び出てきましたよ?!

 嘘やん。
 そんなん、出産の女神さん、要らへんやんか…。(クヌム神の心の中ツッコミ;南方方言)

 この、未来の王となる赤ん坊は、生まれたときから王冠や黄金の装飾品を身に着けて、きんきんキラキラ。黄金は太陽の光の象徴、太陽神ラー様からの贈り物です。
 つか、そんなもん身につけてたから、なっかなか産めなかったんだと思いますが。
 相変わらず考え無しです。ラー様。

 イシス「この調子でガンガン産んでもらうわよォー? あっとふったりっ♪」
 ネフティス「……。(姉さん、怖いわ)」

こうしてイシスの一喝と魔力により、生まれながらにしてゴージャスな飾りを身につけた、三つ子の赤ん坊たちが誕生しました。出産の女神メスケネトが祝福を与え、産湯をつかわし、クヌム神が健康を与えます。
 ちなみにクヌム神は人間の体と魂をつくる神様なんで、この神様の加護を得れば、生涯、無病息災。と、いうか、最初っから特別あつらえの強い肉体を作っていただくことも可能。

 イシス「さ、仕事は終わったわ。サクサク帰るわよ」

 団長は素早く帰り支度。帰りがけに人間界観光とかは、やりません。まるで忙しい営業回りのサラリーマンのよう。
 出産の知らせを今か今かと待ち受けていた夫のラーウセルは、妻が無事出産を終えたことを知って、めっちゃめちゃ喜びます。

 メスケネト「おめでとうございます、元気な男の三つ子ですよ」
 ラーウセル「三つ子! 三人ですか! わあー、ニギヤカになるなぁ!(喜)」

 子供好きのエジプト人、子供できたら大喜び。出産てつだってくれた人たちが人間じゃないことなんて、全然気がついた様子もありません。(神様たちの化けっプリが余ッ程上手だったんでしょうか。)
 大喜びのラーウセルは、お産の手伝いをしてくれた踊り子たちに、大麦一袋をくれました。
 なんでお礼が麦なのか、というと、古代エジプトには通貨は存在せず、取引はすべて物々交換だったからです。
 この重たい荷物も、やっぱりクヌム神が背負います。(ごくろうさまです)

 踊り子なのに一切踊らず。踊り子たちの一団は仕事を終えて、神々の世界に帰ろうと、出発地点(たぶん神殿)へ帰って来ます。ヘリオポリスの神殿から出発して、ヘリオポリスの神官ちに行ったんだとしたら、かなりご近所だよなァ…
 と、そこでイシスが気がつきました!

 イシス「ちょっと待って! 何か足りない、何か足りないわ」
 クヌム「は?」
 イシス「あと一つ何かが… そう、神の奇跡がまだ足りない」

さすがイシス、エンターテインメントの仕掛け人。(違う)
 生まれながらに装飾品つけた赤ん坊が出てきただけで、もう奇蹟は十分なんじゃないの? とかいうツッコミも、やっぱナッシング。

 さてさて、何を思いついたのか団長・イシス。次回へ続く!


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